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みずもん(第二幕)

復活しましたか? さあどうでしょう? SHOT BAR fish bone バカ店主のブログです。 但し店の事は、ほとんど書いていません。

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外国人のお客さんが来た。
女子二名である。
英語と、片言の日本語しか喋れない様子である。
 
まあ礼儀として、「どこから来たの?」と問う。
すると、一方の女子が答えた。
「蒲生四丁目です」
僕は、声を上げて笑った。
だって、<蒲生四丁目>だぜ。
するとその女子は、少し悲しそうに、そしてまた少しイタズラっぽい目で言った。
「何故、ワタシが蒲生四丁目に住んでいると、日本人は皆笑うんですか?」
 
なるほど、このニュアンスは、日本人、否、大阪の人間でないと分かりづらいのかもしれない。
 
まず、外国人に出身地を尋ねたのに、現在の日本の住まいを答えられた可笑しさ。
さらにそれが、蒲生四丁目と云う大阪のローカルな地であったと云うコト。
そしてとどめが、<ガモウヨンチョウメ>その言葉自体の響きの可笑しさである。
 
上記のコトが伝えられる英語力は、僕にはないので、「ガモウヨンチョウメと云う、地名が面白いのだ」そうとだけしか言えなかった。
当然、その女子は納得いかない面容である。
 
ここはひとつ、話をはぐらかしてやれと、もう片方の女子に同じ質問をすると、彼女はこう言った。
 
「喜連瓜破(きれうりわり)です」
 
 お前ら、分かってやってないか?

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関西人の、と云えば語弊があるかもしれないので、大阪の人間の口癖についての違和感である。
例えば、こう云う物言いを聞いたコトはないだろうか。
 
「あんな、びっくりすんで、マジで。めっちゃデカイねん、その店のメロンパン。どんだけデカイかってな、座布団ぐらいあんねん。なっ、ビビルやろ。ほんでな、デカイだけちゃうねやんか。ごっつい旨いねん、その座布団メロンパン。なっ、すごいやろ、知らんけど」
 
お分かりだろうか。
上記セリフの注目すべきは、その巨大なメロンパンにではなく、まして<座布団メロンパン>などと勝手に命名したコトでもない。
問題は最後の言葉、<知らんけど>である。
知らないのか?
なあ、本当に知らないのか?
じゃあ、その熱を帯びた語りは一体何だったんだ?
そもそも、知らないのなら言うなよ。
 
もう一つの事象も記しておきたい。
これも大阪人の口癖のそれである。
殊に女子に多く見受けられる様に思える。
 
「なんかな、カレシが言うとったんやけどな。なんか、めっちゃデカイねんて、そのメロンパン。なんか、座布団メロンパンって云うらしいねんけどな。ほんでなんかな、ごっつ美味しいねんて」
 
こちらの違和感は、しつこいほどに繰り返されているので、分かりやすいだろう。
座布団メロンパンが、あたかも正式名称の様に伝達されているコトではない。
そう、<なんか>である。
漢字を当てると、<何か>だ。
なんか何だ?と言いたい。
 
上記二例から分かるコトは、大阪人の適当さとサービス精神である。
<知らんけど>は、今語ったトコロについての裏付けはとっておりません、正確な情報ではないかもしれません、けど喜んでもらえる様に伝えたかったんです。その言い訳としての<知らんけど>であろう。
<なんか>についても同様で、曖昧な数値に対する枕詞なのだ。
ワタシやカレシは、ごっついと思ったけれども、アナタにとっては、どれほどかは分かりませんと、ぼやかしている。でも、大きい方が面白いでしょう?と云うワケだ。
 
そして、そのメロンパンを買ってみると、実際の大きさは座布団どころかハンカチぐらいなのであろう。
しかし、それで「騙された」と憤る大阪人はいない。
それは粋(すい)ではないからである。
 
まあ、なんか知らんけど。

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店に出勤する前に、風呂に入ろうとしたら。
体をキチンと洗っているか?
との、配偶者の声である。
 
「失礼な、わしゃあ子供か。
当然、綺麗に洗っておるぞ。
シャンプーだって、ハゲ予防の頭皮を洗うヤツだぜ」
 
石鹸を使って洗顔はしているか?
 
「いや~、顔はお湯だけで洗っているよ。
 それでも、肌が綺麗だねと、人から褒められるよ」
 
なら、今日からワタシの洗顔石鹸を使って洗うとイイ。
そしてそのまま、顔の泡を後ろに伸ばして、耳と首の後ろを洗うがイイ。
 
「なんで?」
 
アンタの後頭部から、閉店後の串かつ屋の厨房の匂いがします。
加齢臭と云うヤツです。
 
「え~、そうかなぁ~。お前の鼻が鋭すぎるんじゃないの?」
 
などと、文句を垂れ乍らも、やはり体臭は気になるので、言いつけ通りに泡で顔と後頭部を洗った。
風呂から上がり、服を身につけ、では行ってきますと、最後に昨日つけていたストールを首に巻くと、串かつ屋どころか町工場の廃油の臭いが、強烈に鼻を衝いた。
 
そんな僕の様子を尻目に、配偶者は抱いた息子の頭頂部の香りを、ウットリとした表情で嗅いでいた。

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皆が皆そう云うワケではないのだろうが、確かに昨今の若者男子には、大人しい奴らが多い様な気がする。
草食系男子と云うヤツである。
 
少し前に、当店に団体さんがやってきた。
二十代の男女が15名ほどで、コンパの二次会といった態である。
 
一時間も過ぎた頃だろうか、男女がそれぞれ局地戦、個人戦に分かれて話している中で、あるグループの女子の一人が不意に立ち上がり、もう我慢ならんとばかりに、周りに居る男子にこう叫んだ。
「っていうかアンタら、何で私の顔のコトに誰もつっこめへんの!気にならへんの!?」
 
見ればその女子は、肌の色が浅黒くエキゾチックな顔立ちをしている。
大変に美人だ。
 
「あんな、ウチな、日本とインドのハーフやねん。そこにつっこまれた時のネタも用意しとんねん。せやのに、一次会から何で誰もそこに触れへんかなぁ・・・」
 
いかにも憤っていますとばかりに、その彫の深い顔を歪ませて、関西弁でまくしたてる。
そこからは彼女の独壇場だった。
 
曰く、彼女は食品メーカーに勤めており、営業職なのだそうだ。
「ほんでこの顔やから、扱う商品は、当然カレーやねん」
ここで一度目の爆笑がきた。
「上層部も、ウチの使い方なかなか分かっとる」
けどな・・・、と声をひそめて、ここだけの話と云うトーンで続ける。
「ウチ、カレーあかんねん。辛くてよう食べへんねん」
もはや、テーブルは大爆笑である。
 
 
カレーがダメなその女子は、大変キュートであった。
しかし、何故か彼氏が出来ないのだそうだ。
その理由が、僕には少し分かる気がした。

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子供が生まれたのである。
男子だ。
そろそろ4ヶ月になる。
笑ってしまうほど僕に似ている。
 
さて、僕はロック者で、配偶者はエレクトーン奏者で、絶対音階の保持者でもある。
となれば、我が子には、顔は僕に瓜二つでも、こと音楽の才に関してはハイブリッドに育って欲しいのが、ロック者心である。
そこで英才教育の初手として、音楽を聴かせるコトにした。
そしてそこは、やはりビートルズだろうと、通称、赤盤青盤と呼ばれる、いわゆるベスト盤を買ってきたのである。
 
息子の頭の上で、彼らが駆け抜けた8年間を、永久リピートで流す。
と、不思議なコトを発見した。
他の曲では、手足をバタつかせノリノリの小さき人が、ヘイ・ジュードがかかると必ず眠るのだ。
ヘイ・ジュードは、CD4枚の3枚目後半に位置しており、つまり小さき彼は、ロック親父が最も聴かせたい、4枚目に収録されているビートルズ後期の名曲を聴くコトなく、眠りについてしまうのだ。
 
ヘイ・ジュードは、ポール・マッカトニーがジョン・レノンの息子のジュリアンに宛てた曲であると云う。
我がジュリアンが眠ってしまうのは、もしかしたらその辺りに秘密があるのかもしれない。
 
ところで、ビートルズばかりでは芸がないと思い、ある日はクラシックを流してみた。
モーツアルトである。

するとどうだろう、配偶者が居眠りを始めたのである。

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どう云う具合かは分からないのだが、この夏、スペアミントが高騰している。

こんなコトでは、ミントを千切る手も鈍り、貧乏くさいモヒートしか拵えられない。
そしてそんなしみったれたショット・バーは、ジン・トニックまでもがシャバシャバの寝ぼけた味になるに違いなく、結果、哀れ<長らくの間、ご愛顧いただきました当店ですが・・・>の張り紙が扉に付く、そうなるコト請け合いである。
 
これは大変にイケナイ。
 
と、ミントと云うヤツは雑草の様なモノなので、簡単に育てられる。
そう云う噂を耳にした。
ならばさっそくと、ホームセンターに走り、土と種を手に入れた。
ベランダに小さなプランターを拵え、朝な夕なに水をかける。
植物を育てるのはイイもんだ。
スペアミント高騰の解決と云った当初の動機も忘れ、ただただ芽の出る時を、今日か明日かと待ちわびる日々である。
 
しかし、待てど暮らせど緑の双葉は顔を出さないではないか。
同時に種を蒔いた配偶者の方のプランターでは、サラダほうれんそうが、その新芽を風になびかせていると云うのに。
 
と、ある日の営業中、配偶者からの電話である。
 
「えらいこっちゃ!」
「どないした?」
「生えてんねん!」
「おう!ついに芽が出たか!」
「違う。キノコが生えてきた!!」
 
 聞けば、スペアミントのプランターから、正体不明のキノコが無数に生え出していると云う。

fish boneの扉に張り紙が付く日は、そう遠くないのかもしれない。
 

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1973/07/19
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